接客業が楽しく無いあなたへ
あなたは今、接客業に従事していますか?
接客業とは、個人客との対面でやり取りするのが中心の仕事内容であり、商品やサービスの提案、販売、サポートなどが主な仕事内容です。
顧客に合わせた柔軟な対応力」やコミュニケーションスキルが求められる為、簡単なようで奥が深い仕事内容と言えるでしょう。
私も10年以上、店舗での接客業に従事していたことがあるのですが、その時にも本当に多種多様なお客様が来店され、それこそ舞い上がるほど嬉しかった体験も、泣くほど悔しい思いをしたことも、納得が行かず怒りに任せてしまったことも、自分の知識不足で間違ったことを案内して周りに迷惑をかけたことも沢山あります。
接客業は楽しいばかりではありません。
人によっては、出来れば人とか関わらない仕事が良いという理由で、接客業に従事することを避けている方もいらっしゃるでしょう。
ですが、やはり私は接客業がとても好きで、辛いもしんどいも引っくるめて「楽しかった」と思えますし、もちろん今でも接客業に従事している訳です。
なので今回は、「接客業なんて楽しくない」と思っていらっしゃる方に、少しでも接客業の楽しさが伝えられたらと思いました。
接客業に従事していない方は、是非この記事を読んで、「こんなことを考えながら接客している人もいる」ということを知って頂ければ幸いです。
接客業のメリット
それでは、接客業のメリットからお伝えしていきます。
1.目の前で感謝される
綺麗事に聞こえるかもしれませんが、やはり人に感謝されるシチュエーションは多いです。
ほんのちょっとした「ありがとう」という一言ことから、時には感謝のお手紙や差し入れを頂けることもあるように、人によって感謝の度合いや仕方は様々ですが、仕事中に人から感謝されて嫌な思いをすることの方が少ないのではないでしょうか。
また、同じ接客業に従事しているからこそ、例えば店内を忙しそうに立ち回る店員さんを前に、「何でもっと早く来れないんだ」と声を荒げる前に、「こんな混雑の中対応してくれてありがとうございます」という感謝の気持ちを持てるようにもなります。
「お客様は神様だから、どんな横柄な態度をとっても良い」なんて考え方はもう古いです。
ぜひ一度店員さんの立場に立って、自分がどんな立ち振る舞いができるかを考えてみるだけでも、接客業が「つらい」と思う人がまた一人少なくなるのではないでしょうか。
2.人の役に立つ
特にサポート系のお仕事や、何かそのお客様が困っていることについての提案などをする業種はもちろん、飲食店や小売店での業務でも、その人が必要だと思ったものを提供すると言う観点において、人の役に立たない接客業なんてありません。
人の役に立つことでやりがいや達成感に繋がり、それが続くことで自己肯定感も上がっていきます。
自分の言動が誰かの役に立つことが分かると、その仕事もどんどん楽しくなることでしょう。
3.多様性を学べる
世の中には本当に色んな人がいます。
以前私が外国のお客様に「Thank you」と言ったところ、「私はもう日本に住んで20年以上です。他の日本人にもThank youと言うのですか?」と言われたことがあります。
当時の私はまだ新人だったこともあり、「何でThank youって言っただけでこんなことを言われなくてはいけないのだろう」ととてもムカついたことを覚えています。
しかし後になって振り返ると、そのお客様は「Thank you」という言葉にもしかしたら「差別」と感じられたのかもしれません。
外国人風の見た目だから日本語は不得意だろう、というバイアスですね。思い込みとも言います。
またある時は、パートナーへのプレゼントを選びに来られた男性のお客様に対して「彼女さんは普段、どんな色をお持ちになることが多いですか?」と聞いてしまったのです。
その後その男性はほんの少し間を開けた後に、「あ、と…男性なんですが、青が好きですね」と仰いました。
私はここでも無意識に、「男性のパートナーだから、女性だろう」と結びつけてしまったのです。
そのことがあってから「彼氏・彼女」という言葉を避け、「パートナー」という言葉を使うようにしています。
相手を差別したり、傷つける意図は全く無かったとしても、相手が嫌な思いをした時点で、そこから良好なお店の体験を提供することは非常に難しくなります。
人はどうしても先入観や、思い込みをする生き物なので、それをするなというのは無理なことだとは思いますが、常に自分の言葉は相手を癒すことも出来れば傷つける武器にもなってしまうということを接客業を通して学ぶことができたので、自分の「当たり前」が皆の「当たり前」ではないかもしれないということも、是非覚えておいて下さい。
接客業が楽しくなる5つの方法
さて、ここからは実際に接客業が楽しくなる5つの方法についてご紹介していきます。
「接客業のメリットは分かったけど、それでもやっぱり楽しくないし、しんどいんだよ」という方も沢山いらっしゃるかと思います。
それは、99回「ありがとう」と言ってもらえたとしても、1回「二度と来ない」と言われる方がインパクトが大きくて記憶にも残りやすく、また「接客業なんて最悪だ」と思ってしまう要因に、いとも簡単になりえるからです。
先ほどもお伝えした通り、本当に色んなお客様がいらっしゃいます。
こちらは「こんなことで?」と思うようなことに、とても丁重な感謝の言葉を述べられる方がいる一方、「どうして赤の他人にそんな不躾な態度がとれるのだろう」と疑問に思う方もいらっしゃいます。
そしてそんなクレーマーの方や、不躾な物言いの方の言動に左右されてしまうと、いつしか心身が疲弊して接客業が嫌になってしまうのです。
そんなクレーマーの為に心を病まないで欲しいし、気にしなくても良いよという一言に尽きるのですが、それでもやはり気にしてどんどん疲れてしまいますよね。
99%の仕事は、ストレスフルな状況や、心身がしんどいなと思う瞬間はそれなりにあると思います。
なので、それを回避したり怒りで上書きするのでは無く、うまく自己処理が出来るようになると、仕事だけでなくプライベートもかなり心身のストレスが軽減されることと思います。
ぜひ、自分の中で取り入れられる方法があれば試してみて下さい。
心身の体調を整える
なによりも大切なことは、自分の心身の調子を整えること。つまり、ご機嫌でいること、ですね。
例えば疲れやストレスが溜まっていて自分に余裕が無いと、単純なミスをしてしまったり、お客様やスタッフ同志の言動一つ一つに心が揺さぶられがちです。
それで常に気分が一喜一憂してしまうとさらに疲弊してしまって、しんどいことは2倍に、楽しいことは半減してしまいますよね。
また、風邪をひいていたり、なんとなく倦怠感があるなんて言う場合も同様です。
なので、疲れていると思う前に疲れをコントロールする必要があります。
何をすれば自分の調子が上がるのか、何をすればきちんと休めると感じるのか、常に自分の調子に意識を向けるようにしましょう。
人への親切は、自分自身に対してめいっぱい親切に大事にしてあげてから、余った部分のお裾分けで良いのです。
あなたは目の前のお客様より、自分のことを大切にもてなしてあげられていますか?
周りの人を満たしてあげる為には、まず自分が満たされていることが非常に重要です。
まずはどうすれば自分の心身のバランスが整うのか、意識しながら休日を過ごされてみては如何でしょうか。
丁寧な所作を身につける
これは接客業が楽しくなるだけでなく、日常生活も楽しくなる魔法と言っても過言ではありません。
例えばどこかで買い物をしてお釣りを受け取る時に、投げて返されると気分が悪くなりませんか?
ただし、本人はそんなつもりは無かったというのです。
つまり、日頃の何となく行っている動作がほんの少し粗暴なだけで、意外と周りに嫌な印象を与えてしまっていることがあるのです。
言葉遣い、物を扱う動作、をほんの少し丁寧にしてみる。
ゆっくりしてみる。
それだけで人は「この人は丁寧な人だな」という印象を持ってくれるそうです。
同じことをしていても、たった少しの工夫で周りの印象が勝手に変わってくれるなんて、こんなお得なことは無いと思いませんか?
急には中々変えられないよ、という方は、まずは呼吸をいつもより1秒ゆっくりしてみるのは如何でしょうか。
深い呼吸はより多くの酸素を体に取り込め、脳にも酸素が行き渡るようになります。
そうすると血行が良くなり、交感神経と副交感神経のバランスが整い、幸せホルモンと呼ばれるセロトニンが分泌されます。
いつもより、少し呼吸を深めるだけで良いのです。
そうすると自然と、心に余裕が出て動作が丁寧になり、周りの評価も勝手に上がってくれるので、是非試してみて下さい。
商品に興味を持つ
皆さんは、お仕事で取り扱っている商品にどれくらい愛着がありますか?
仕事で取り扱っているだけだからと適当に扱うと、それが日頃の言動にも表れ、お客様も「この人には聞きたくないな」とか「この人からは買いたくないな」と思われてしまうかもしれません。
仮に製品が売れようが売れまいが自分の評価には関係無い、という方も多くいらっしゃるかと思います。
けど、仕事で取り扱っている商品に興味を持つことで、周りのあなたに対する評価が大きく変わるかもしれないとなったらどうでしょう。
例えば飲食業ならオーダー時に「今はこの食材が旬なので、こちらのメニューもおすすめですよ」とか、「実はこのメニュー、こんな誕生秘話があって、それでようやく皆様にご提供できるようになったメニューなんです。良かったら試してみて下さい」でも良いでしょう。
また、アクセサリー業界なら今のトレンドを把握するだけでなく、デザイナーさんがそのデザインを世に出したストーリーや、作り手さんのメッセージなどをお客様に伝えてみたり、商品を観察して自分が気に入っているポイントをお客様に伝えてみるだけで、お客様はきっとあなたの接客に引き込まれるはずです。
私は普段問題解決をするサポート業務に従事しているのですが、「この問題はこれで解決できますが、実はこうするともっと便利な機能になるんですよ」と、「面倒臭い機能」という印象を、なぜその機能があるのか、誰がどんな時にその機能を使うと便利な機能に早変わりするのかをお伝えすると、ただの煩わしい機能から、そんな便利な使い方もできるんだと、思い直して頂けることもあります。
もちろんその上で使うか使わないかはお客様によりますが、世にある商品の大半は、「誰かが誰かを思って、より良くしたいと思って世に生み出した」ものが多いかと思います。
そのことをお伝えできるような熱量と知識を提供できるよう商品に興味を持つと、自分自身も仕事が楽しくなっていくのが、また不思議なところでもあります。
皆さんが取り扱っている商品は、どんなストーリーがありますか?
自分の接客を客観視してみる
人にはそれぞれ“クセ”があります。
例えば私がよく言われていたのは「早口である」ということ。
新人の頃は緊張もあるし、言わなきゃいけないことも沢山あって、自分でも気づかない内に早口になっていたことがよくあり、自分ではあまり気づいていなかったのですが、よく先輩に指摘されたものです。
また、お客様のお荷物などをお預かりする際に、片手で動かしたりもしていました。
これも別に悪気があるとかではなく、ほんの無意識なんです。
ですが、先輩に自分の接客を見てもらったり、普段買い物やサービスを受ける時に他の方の接客を見てみると、片手よりも両手で持ってもらった方が大切に扱われているなと感じたり、作業しながらでも時々目を合わせて相槌を打ってもらうときちんと話を聞いてもらえていることが伝わってくるなど、気づくことが沢山ありました。
一朝一夕で身につくものでは無いと思いますが、今一度自分自身の接客を客観視してみるか、少し勇気を振り絞って先輩などに自分の接客を見てもらうことをお勧めします。
慣れてきたらお客様に「今のちょっと早口でしたか?分かりづらいところありませんでしたか?」と聞いてみるのもアリです。
周りの人の反応は鏡とも言います。
自分の接客や言動を振り返ってみて、自分が嫌だなと思う接客をしていないか、今一度客観視してみましょう。
非言語コミュニケーションを意識する
非言語コミュニケーションとは、文字通り言葉以外のコミュニケーションです。
表情、アイコンタクト、相槌、声のトーン、会話の速度、髪や爪などの外見、距離感、身振り手振りなど。
もっと広い視野で言うと、店内の清潔感やBGMの大小、空調、インテリアなども非言語コミュニケーションに含まれます。
そしてこれらは、言葉だけでは伝えきれない情報を補完して相手に伝えることができます。
メラビアンの法則という言葉を聞いたことがある方も多いかと思います。
人とのコミュニケーションにおいて、相手に与える影響をパーセンテージで表したものですが、言語情報はわずか7%、聴覚情報が38%、視覚情報が55%というものです。
もちろん言語でのコミュニケーションは非常に重要ですが、相手に情報を伝えることと、相手に影響を与えるということは同じでは無いということですね。
情報を伝えるだけなら言葉だけで十分かもしれませんが、その背景にある感情や印象という、目に見えないものを相手に伝えるには、言葉だけだと不十分ということです。
しかし、日々の忙しさやストレス社会の中で非言語部分というのは、おろそかにされやすい部分でもあります。
だからこそ今一度、自身の接客の中にある非言語コミュニケーションを見直し、少しでも楽に、印象良く相手に情報が伝えられたら、もっと肩の力を抜いて接客業を楽しめると思いませんか?
人への親切は自分を満たした後の余った分のお裾分け
さいごに皆さんにこれを伝えたいと思います。
接客業に限らずプライベートにおいても、自分のことは後回しにして人の為に頑張ろうとする方がいます。
また、きちんと自分に優しくしてあげられていないのに、人に優しくしなければと思っている方も多く見受けられます。
人に親切にすることも、優しくすることもとても大切なことですが、まずは自分自身を大切にすることが最優先です。
自分自身を親切丁寧に優しく満たしてあげてから、それで溢れて余った分を人にお裾分けしてあげたらそれで十分なのです。
皆さんは自分に優しくできていますか?
満たしてあげられていますか?
肩の力を抜いていますか?
自分の心の声に耳を傾けてあげられますか?
まずは誰よりも、自分自身を労ってあげて下さい。
そうすると、自然と接客業が楽しくなるだけでなくプライベートも充実して、より自分らしい人生を見つけられるようになります。
接客業も、人生を楽しむ為の一つのエッセンスです。
沢山の人と関わる中で、自分らしさを見つけていくことを楽しんでみては如何でしょうか。
接客業を楽しむということは、人生を楽しむ」ことに通ずると思います。
皆さんの接客業が少しでも楽しい、実りのあるものとなりますように。
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